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2017.2.14  八ヶ岳連峰主峰赤岳(2899m)登頂

2月6、7日に八ヶ岳の主峰赤岳に登頂した。厳冬期の赤岳は8年ぶりになる。以前は一人で登ったのだが、あれから歳を取ったし一人は危険なので在京の山友と二人で登った。
ひさしぶりの赤岳は天候に恵まれなかった。風が強くて視界が悪かったので途中で何度も断念しようと思ったのだが、なんとか登頂できて嬉しかった。
今回は気象条件が厳しい赤岳への登頂だったので、撮影はほとんど諦めていた。しかしそんな中、数少ない撮影チャンスもあったのだ。経験から言うと、厳しい条件の登山中で一瞬の撮影チャンスに出会った時は最も危険である。なぜなら、そのチャンスを逃したくない気持ちが先走って焦ってしまい、動作や手順がおろそかになりがちだからだ。撮影できるかもしれないチャンスが来たら、まず行うのは安全な足場の確保である。できるだけ強風を避けるため、岩の窪みなどにザックをおろしてカメラを取り出さなくてはならない。オーバーグローブを着けたままだとカメラの操作はできないのでオーバーグローブを脱いでアンダーグローブだけで操作しなくてはならないが、オーバーグローブを脱いでいる時間は1〜2分くらいが限界だ。それ以上だと指先が冷えて強烈に痛くなる。いわゆる凍傷の初期である。強風にさらされているので体感温度はおそらくマイナス30度くらいだと思う。そしてその脱いだオーバーグローブが風で飛ばされないようにカラビナに固定しておかなくてはならない。もし飛ばされてその後の行動をオーバーグローブなしで行うとすればそれはもう地獄だ。ワタシの場合は万一のことを考えて予備のオーバーグローブを必ずザックに装備することにしている、もちろんアンダーグローブも。実際に撮影する時は両手でカメラを構えるが、その時は再度足場を確認して強風に耐えられるように幾分両足を広げてアイゼンを固く締まった雪氷にガッチリ噛ませて踏ん張った形をとって構えなくてはならない。行動時は常にピッケルを持ってより安全な姿勢をとっているが(ピッケルは命綱なのだ)、撮影の時は手からピッケルを離すのでとても無防備になってしまう。もし転んだりよろけたりしたら大事故に繋がる可能性がある。だから撮影時間もできるだけ短くした方がよい。落ち着いて焦らないことが重要だ。そうやってカメラを構えた途端、その撮影チャンスが過ぎ去っていることが多い。多いと言うよりほとんどそうだ。そんな中、やっと撮れたのがこの↓写真である。
https://ritz-imaging.jp/category/gallery/mountain/alps-yatsugatake-fuji
赤岳の山頂近くから一瞬姿を現した阿弥陀岳である。晴天の山も美しいが、このようなガスに煙る山はその厳しさをより表現できているのではないかと思う。

話は変わるが、無事下山して帰宅した翌々日にこの阿弥陀岳から二人の早稲田大学山岳部の学生が二人滑落したニュースが舞い込んで来た。そして先ほど知ったが、一人は意識があって助かったらしいが一人は頭を強く打っていて死亡したらしい。なんともいたましく悔やまれる事故だと思う。その事故のほんの3日前に撮った阿弥陀岳だが、なんか感慨深いものを感じてしまう。
体力も技術も未熟なワタシでも経験を少しずつ積めば厳しい登山も可能だということなのだ。いろいろ危険が多い冬の登山だが、実際登って観た山景はあまりに素晴らしく、脳裏から消えることはない。